『タイルが落ちた!剥離(はくり)の仕組みと対策は?』LIXIL担当者にインタビュー‼︎


 昔からタイルはモルタルで張るものとされてきました。しかしながら、今、建築工事の変化から、タイルが剥離する現場が見受けられるようになり、モルタルで安全に施工することが難しくなっています。
 今回はタイルの剥離について、タイルのトップメーカであるLIXILの施工研究員の方に、どうしてタイルは剥離するのか? を直接お聞きしました。

 

『タイルが落ちた!剥離(はくり)の仕組みと対策は?』

その1.タイルが剥離するからくり

business_man3_1_question
ASTAS:
 今回のテーマはタイルが落ちる、つまり剥離(はくり)ということですが、、、
 そもそも、タイルはどうして剥離するんでしょうか?
担当者様:
 タイルが剥離する主な原因は、建物に生じる歪みによるものだとされています。
sagyouin_man01_smile
business_man1_1_smile
ASTAS:
 建物の歪みですか?施工者の技術が原因となっている印象がありました。
担当者様:
 確かに昔は、材料(吸水調整材)の使用方法やオープンタイム(タイルを張るまでの待ち時間)の誤り、タイルのたたき不足、下地の調整不足など、施工者の技術が原因だとされていました。実際にそれらが原因になることもあります。
sagyouin_man01_smile
business_man1_1_smile
ASTAS:
 はい。
担当者様:
 しかし近年では、タイル剥離の原因の大部分が建物に生じた歪みであるとされています。
sagyouin_man01_smile
business_man2_1_idea
ASTAS:
 そうなんですね!でも建物の歪みが原因とされている理由はなんでしょうか?
担当者様:
 そもそも建物は、建ってからずっと気温の変化や風雨などの環境に晒され続けますよね。そういった温度の変化や乾燥・湿潤の繰り返しによって、躯体(建物の主な構造部分)のコンクリート、躯体とタイルの接着の役割を果たしているモルタル、そしてタイル自体にも、それぞれ伸び縮みが起こります。その動きが、躯体とモルタル、モルタルとタイルの間で異なるため、少しずつ歪みが生じていくんです。
sagyouin_man01_smile
business_man2_1_idea
ASTAS:
 建物の歪みとはそういう意味だったんですね!
担当者様:
 はい。
 その歪みがどんどん大きくなり、躯体とモルタル、モルタルとタイルによる接着力を上回ったとき、タイルの剥離が起こります。一般的にはタイルが剥離するという表現をされますが、実際にモルタルとタイルの間で剥離することは滅多になく、ほとんどの場合はコンクリート躯体とモルタルとの界面で剥離しています。
sagyouin_man01_smile
tile-peeling-measures

タイル剥離の図

 

その2.コンクリート躯体の変化と問題点

business_man3_1_question
ASTAS:
 つまりタイルの剥離は、コンクリート躯体とモルタルの間に大きな原因があるということでしょうか?
担当者様:
 そうですね。
 特に近年では、コンクリート躯体が変化してきていることも原因の一端となっています。
sagyouin_man01_smile
business_man3_1_question
ASTAS:
 コンクリートの変化ですか?
担当者様:
 はい。
 端的に言えば、コンクリート躯体の表面が滑らかになったことですね。これはコンクリートを打設するための型枠材が繰り返し使用できる材質に変更されたり、離型剤と呼ばれる型枠を外しやすくするための薬剤が多用されることが起因しています。
sagyouin_man01_smile
business_man3_1_question
ASTAS:
 躯体の表面が滑らかになることが、なぜタイルの剥離につながるのでしょうか?
担当者様:
 躯体とモルタルは、物理的な噛み合わせで結合しています。つまり、凹凸があるほどその噛み合わせ部分も増えるため、結合も強固なものになるわけです。逆に滑らかな面だと結合しづらい状況になってしまいます。
sagyouin_man01_smile
business_man2_1_idea
ASTAS:
 なるほど。
担当者様:
 更に躯体自身も、近年の建物の高層化の影響から、高強度コンクリートが採用されるケースが多くなっています。この高強度コンクリートは、通常のコンクリートより緻密で硬く、同様にモルタルとの物理的な噛み合わせ部分が少ないことがわかっています。
sagyouin_man01_smile
business_man3_1_question
ASTAS:
 ではコンクリート躯体への物理的な噛み合わせは、どうすれば増やすことができるのでしょうか?
担当者様:
 こういった噛み合わせ部分の少ないコンクリート躯体へのタイル張りを行う場合、「目荒らし」が非常に重要になります。「目荒らし」とは、コンクリート面に機械的に大きな傷を作り、わざと物理的な噛み合わせ部分を多く作ることです。この目荒らしが十分にできていない場合に、タイル剥離の事例が発生するケースが散見されています。
sagyouin_man01_smile
tile-peeling-measures-top02

超高圧水洗目荒らし工事

tile-peeling-measures-top06

目荒らし工事 前

tile-peeling-measures-top04

目荒らし工事 後

 

その3.モルタル張りの問題点

business_man3_1_question
ASTAS:
 他にもタイル剥離の原因になっていることはありますか?
担当者様:
 コンクリート躯体でなく、モルタル側にも問題があるケースはあります。タイルの張り付け材料は、モルタル、厳密に言えば既製調合モルタル(セメント、砂、混和剤)を混ぜ合わせて用いるのですが、この水の量というのが物理的な噛み合わせに関係しています。
sagyouin_man01_smile
business_man3_1_question
ASTAS:
 水の量ですか?
担当者様:
 はい。
 モルタルと混ぜ合わせるのに最適な水の量というのは、気温、湿度、風量などで非常に左右されやすいものなんです。もちろん基準はありますが、最終的には現場の施工職人さんの判断で決められます。つまり、水の量が適していない場合、モルタルの物理的な噛み合わせに支障が生じ、剥離につながってしまうわけです。昔はそういった知識や技能、経験を持った職人さんが多くいたため、剥離事故も少なかったのですが、そういった職人さんが高齢化や引退によって少なくなっているといった事実も要因の一つといえます。
sagyouin_man01_smile
tile-peeling-measures02-2

 

その4.剥離に強い有機系接着剤張り工法(弾性接着剤張り工法)

business_man3_1_question
ASTAS:
 これまでにあがった剥離の原因について、根本的な解決策はあるのでしょうか?
担当者様:
 先にも申したように、タイル剥離は、躯体とモルタル、モルタルとタイルの伸び縮みの動きの違いが歪みにつながっていることが根本にあります。そこで最近では、モルタルの代わりに「有機系接着剤」の使用をおすすめしています。
sagyouin_man01_smile
business_man3_1_question
ASTAS:
 有機系接着剤とはどういったものなのでしょう?
担当者様:
 有機系接着剤は弾性接着剤とも呼ばれるのですが、その名の通り、固結しても弾性が残っている接着剤のことを指します。弾性が残っていると、躯体やタイルが伸び縮みしてもその動きを弾性が吸収するため、歪みが生じないのです。
sagyouin_man01_smile
business_man2_1_idea
ASTAS:
 歪みが生じない…つまり根本的な解決策といえますね!
担当者様:
 そうですね!
 また、モルタルの接着力は物理的な噛み合わせ、いわゆるアンカー(投錨)効果と呼ばれる機械的結合によるもののみでした。しかし有機的接着剤の接着力は、機械的結合はもちろん、化学的結合(分子間の化学反応による結合)や分子間の物理的結合が発現していると考えられています。
sagyouin_man04_laugh
business_man2_1_idea
ASTAS:
 より強固な結合が期待できるわけですね!
担当者様:
 更に、モルタルによる施工は現場での知識や技能、経験が必要という説明をしましたが、有機系接着剤はパックから取り出してそのまま使用できるようになっています。施工時において安定した品質が担保できるため、よりタイル剥離が起きにくい環境を作ることができますね。
sagyouin_man04_laugh

 

まとめ

 LIXILのタイル施工研究員へのインタビューはいかかがでしたか?
 タイル剥離(はくり)の仕組みと対策について、LIXILの施工研究員からの生の声をお届けできたのではないでしょうか!
 今後も様々な立場の担当者から直接インタビューを行い、隠れたタイルの魅力に迫っていきたいと思います。

ASTAS
ASTAS

明日(アス)に「+(タス)」ヒントがここにある。 アスタスは「住空間に関わる全てを提案する」ことをコンセプトに掲げ、建築、インテリア、ガーデン、アートのスペシャリストが集いスタートした「住空間提案サイト」です。