【建築家に聞く】新築住宅の重要なポイントは?【実例あり】


キッチンや収納も重要ですが、住まいづくりで最も大切なのは家族のコミュニケーションの取りやすさを考えることではないでしょうか。そして意外に忘れがちなのが、住まい手の将来の変化を考えることです。ここでは事例をご紹介しながら、住まいづくりを失敗しないための重要なポイントをご紹介します。

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「栗原町の家」子世帯

 

 

 

三世代で支え合う暮らし

ご両親が高齢になったことをきっかけに、実家の隣に子世帯の家を新築することになりました。これに合わせ親世帯もリフォームを行い、三世代で支え合う暮らしが描かれました。家族みんなが、帰ることを楽しみにするような住まいが目標です。

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縁側から気軽に声を掛けられるような関係

二世帯が程よい距離感を保てるよう、お互いの建物は中庭を介してゆるやかに繋ぐことにしました。子世帯の玄関とリビングを中庭に面して設け、中庭は親世帯の庭へと続いています。お互いが縁側から気軽に声を掛けられるような関係になりました。逆に2階では内部で直接行き来できるようにしていて、扉は二世帯それぞれに設けてあります。
現在、小学生のお孫さん達は、ここから楽しそうに二つのお家を行き来しています。

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豊かな暮らしを吹き抜けに委ねる

部屋の隅々まで光や風を届けるために、建物の中心に吹き抜けを据ました。この吹き抜けを幹(みき)に見立てて、それぞれの部屋が房(ふさ)のように立体的にくっつく設計です。それぞれの部屋の扉は全て引き戸にしているので、生活のシーンに合わせて繋がり方を調整できます。特に子ども室は使われ方がどんどん変化して行くので、 回遊できる動線を設けるなどして、よりフレキシブルな利用を可能にしました。扉はどこも開けたまま生活できるよう工夫していて、なるべく空間を仕切らないよう(間仕切りにならないよう)心がけました。これにより空間に広がりが生まれ、家中どこにいても家族の気配が感じられるようになりました。

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開放的な生活を支える住宅性能

 吹き抜けから朝日が降り注ぎ、夕刻は中庭を通して尾道の夕暮れを楽しめます。自然の移ろいを感じながら、子ども達と触れあう時間を大切に過ごせる開放的な住まいになりました。この生活を支えているのは二重の断熱層と断熱窓で構成された「魔法瓶のような家」です。加えて家全体の温熱環境を、わずかなエネルギーで調えることができる床冷・暖房システム(ヒートポンプ式土間蓄熱型)を組み合わせてあります。家中どこにいても同じ温度の快適で安全な生活と、同時に建物の高い耐久性も得ることができました。

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「栗原町の家」子世帯 新築
所 在 地:広島県尾道市
家族構成:夫婦+子ども2人
構造規模:木造軸組工法、二階建て
延床面積:135.34㎡(40.94坪)

 

 

 


平田 欽也
平田 欽也

1962年広島市生まれ。広島工業大学建築学科卒業後、建築家 清家清に師事し1997年に独立。 現在、一級建築士事務所「アトリエ平田」代表。シンプルな構成の中にも気遣いが感じられる住宅を得意とし、家族のコミュニケーションや気候・風土を大切にしていく住まいづくりに情熱を注いでいる。 1996年「ギャラリーのある駅」でインテリアプランニング賞 優秀賞、2007年「太陽工業新社屋」で日経ニューオフィス賞 優秀賞。2010年「尾道の家」でひろしま住まいづくりコンクール 最優秀賞。 広島工業大学建築デザイン学科非常勤講師。