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適者生存(向き・不向き)
お庭やお部屋にグリーンが欲しいので考えて欲しいと依頼されることがあります。そんな時まずは、なぜ欲しいのか?どんな生活シーンのなかでグリーンがあればいいなと思うのか?をお訊ねし、その方がお持ちの価値観や生活のなかで大切にしていることなどを確認するようにしています。
なかには、こんなイメージの庭が欲しいんだ、あるいはこんな木が欲しいんだと明確に語っていただける方もおられ、それはその後の設計提案に大変参考になります。さらに、旅行で見かけたあの木を庭に植えたい、あるいは芝生でもあのゴルフ場のグリーンに使われている芝の種類で再現したいというような、もっと明確なイメージをお持ちの方もおられます。


思い入れのある花や草木の場所が日本国内、それもこれから植える場所と同じような環境であればいいのですが、バリ島(海外)で見かけたあの花や木とか富士桜カントリー倶楽部のベントグリーンを再現したいと言われると困ってしまいます。
というのも、インテリアの家具や建築の外装材料などの製品は持ってくることは比較的たやすいのですが、花や草木は生きているので植えたら終わりではなく、その後もスクスクと育ってくれることが重要なのです。
植えたい場所(屋内・屋外)の日あたりや風通し・雨量(水やり頻度)・寒暖などの気象条件、根を張る場所の土の状況あるいは植木鉢やポットの状況、それらに適した種類しか育たないのです。もちろん、現在の最新技術を用入ればその状況を再現することは可能です、ただしコスト面を考慮しなければですが。
イメージしてみてください。水中で人は呼吸できません。だからスキューバダイビングではボンベを背負って潜る必要があるのです。さらに、宇宙遊泳には過度な太陽光線や有害な宇宙線から人体を守らなければならないですし、温度や圧力を一定に保つ必要があります。しかしながら、コストを掛けてもそれらが可能なのは限られた時間であり、食事を摂ることも排泄することもできないのです。
花や草木も同じことで、本来適さない場所ではコストと手間を掛けて適する環境をつくり続ける必要があるのです。


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どれだけお世話できますか?
コストや手間を惜しまなければ生育することは可能ですが、一般的な方はそこまでコストをかけたくない&できるだけ世話が必要ない計画を提案してほしいと望まれます。
まずは生育環境(世話の程度も含む)に適した樹種を選ぶことが重要で、そうすることが病気や枯れるなど(=樹勢が弱ると病虫害にあいやすくなる)のリスクが少なく維持コストを低く抑えること・世話の程度が軽くなることにつながります。
次に、植える場所の土壌がその樹種に適したものにしてやることです。意外と思われるかもしれませんが、多くの草木は根から水や養分を吸収するだけでなく呼吸もしています。水はけが悪いと、人が水に潜っているのと一緒で呼吸ができなくて根腐れを起こしてしまいます。そこで水はけが良く、空気の通りがよい土にしてやること。そして、保水しやすい土壌にしてやると水やりの頻度が少なくなり、世話のかからない環境を得ることができるのです。植木鉢やハンギングバスケットなどは、地植えよりも地表に露出しているので、より乾燥に留意してあげる必要があります。
このように土壌環境を整えてあげることで生育しやすさは格段にあがるので、目の届かない場所ですが特に気をつけてあげるといいでしょう。
コスト面で余裕がある方ならば、水やりをタイマー制御にしたり、樹木の世話を造園業の方に年に数回あるいは月に1回程度お任せするのも手間をかけたくない方にとってはひとつの選択肢でしょう。




一人暮らしでなかなか世話をすることができないけど、部屋の中にちょっとグリーンが欲しいという方には、乾燥に強い樹種もあるのでそちらをおススメします。
なかには、全く世話できないんだけどという方もいらっしゃいます。そんな方には樹脂などでできた人工観葉植物などを勧めることもあります。最近のものは見た目も随分良くなっているので、世話をしたくないというのが優先順位の一番であるなら、そのような選択もありでしょう。ただ、屋外に人工樹木を置くことはまだまだお勧めできません。一年だけなど短期間であればいいのですが、経年変化で材料の樹脂などが劣化するのと褪色が起こるのがその理由です。
いずれにせよ、どの程度世話ができるかによってどのようなグリーンを取り入れることができるかが決まってきますので、この部分は慎重に検討してください。


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+アルファを楽しむ
部屋やお庭にグリーンが入ったら、毎日その姿を愛でてやってください。生き物ですから何らかの変化があるはずです。ときに世話が大変だなって思うこともあるでしょうが、それも含めてグリーンのある生活を楽しんでください。
また、グリーンのある部屋やお庭を背景として、ペットや動物フィギュア、ぬいぐるみを主役に見立ててスマホで写真を撮ることもオススメです。写真で切り取られた風景は、いつもの見慣れた場所とは違いひとつの物語のようなシーンを演出することができます。そしてそれらをSNSに投稿して友人らと共有するというのも、現代ならではのグリーンのある生活を楽しむひとつの方法ですね。



