木のおもしろさを思うままに “ 額 ” で表現


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額作家
工房アム

森原もりはら 明良あきよし さん
1956年広島県庄原市出身。
建築家を経て2002年から額作家として活動。

 

 

建築現場で発生した残材や廃材を使って世界に一つの木の額を作り、気の向くまま地元広島のアーティストと展覧会を開催している森原さん。木の魅力や、活動についてお話を伺いました。

 

―そもそも額を作るきっかけは?

森原さん(以下森原):様々な建築現場を見ている中で、木を捨てるのをもったいない、といつも思っていたんです。ある時、自作の椅子の購入者におまけのつもりで木の額をあげたら気に入られて、額の製作を頼まれるようになりました。その後、地元庄原のフリーマーケットで小さな額を作って売ってみると喜ばれて。

 

―森原さんの額にはどれも木本来のあたたかみを感じます。木を加工し四角の額もあれば、丸い何かの木製品?を使ったものもある。小さくて可愛いミニ額も。色も形も様々。額にする木はどのようなものがあるのですか?


森原:「ケヤキのタンス」「パインのフローリング」「枯木」「モロッコのヒマラヤ杉の灰皿」「室町時代のお寺の改修工事時に出た廃材」・・・ とにかくいろいろ。廃材になるのは、「ふし」があったり曲がったりしている木。でもこれらの欠点は、「特徴」「個性」であって、額を作る上での「面白さ」につながるんです。

最初は自分から廃材等を探しに行っていたけど、今では色んな人から「これ使わんか?」と申し出があり、取りに行かせてもらっている。ひとつひとつの木には歴史がありストーリーがあり、それもまた面白い。

と言って見せてくれたのは、「屋久島の杉の木」の板。知り合いのお父さんが亡くなりお母さんが遺品を整理していて出てきたものなのだとか。


 

 

 

展覧会開催ではアーティストとのコラボも

これまで様々な展覧会を開催されてきた森原さん。DMを見せていただき、お話を伺います。

 


森原:気の向くまま、ご縁つながったカフェやギャラリー、パン屋でも開催しています。このあいだもギャラリーのオーナーからグループ展をしないか、とまず私に話が来て。

―先に額作家に声がかかるんですね!?

森原:知り合いのアーティストたちに協力してもらって、私の額に作品を飾っていただく、という展覧会でした。

―『Mの額縁7人展』のことですね。これ興味深いです。

森原:アーティストも、その額に合った作品を制作したり、逆に「こんな額を作ってくれ」と要望を聞いて、作品に合った額を作らせてもらったりもした。

―森原さんならではの面白いコラボレーションですね。

森原:あとね、桜の木の額だけでやる「桜展」や、杉だけでやる「杉展」もやったね。「屋久杉展」もやる予定。もちろんその屋久杉をいただいた方のお店でね。あとは桐のタンスをいただいたので「桐展」「柿の丸太展」「ケヤキ展」・・・

―わ、構想がたくさん。今後が楽しみですね!

直感で制作、意外性を楽しむ

工房は3階屋根裏。ここで捨てられるはずだった木材たちが素敵な額に生まれ変わる。

 


―額作りのこだわりや楽しさとは何ですか?

森原:「こういうものを作ろう」と意思を持ちイメージすると、限りがあるんです。そうではなくて、いろんなご縁でうちに来た廃材や木々を、なりゆきのまま、直感で額にしていく。その方が意外性があり作っていて面白い。思いもよらないものができるしね。飾る場所は、トイレでいいよ。落ち着く場所へ飾ってください。

―家具や空間に対して何か思うところはありますか?

森原:塗装に触りたくないね。最近の家具はだいたい塗装されている。ぬくもりのある木そのものに触れたい。木が好きだから。


―これからどうしていきたいですか?

森原:なりゆきのまま自然のままある「木」のように、自分も、なりゆきを楽しんで製作していきたい。今後の展開も、なりゆきのままに・・・


―「なりゆき」って「自分らしく」居るっていうことなのかも。実は深いですね。森原さん、ありがとうございました!

 

洗練された家具もいいですが、気取らない、飾らない、ストーリーを持つ「木」たちを、森原さんがなりゆきで加工した額。空間に癒しと温もりを足し、自分が自分らしくいることの素晴らしさを教えてくれるかもしれません。

 

 

 

 


池田 奈鳳子
池田 奈鳳子

1982年、岡山県倉敷市生まれ。広島修道大学法学部卒。 2006年イラストレーターとして独立、『絵描屋(えかきや)』を設立。 2008年に長編漫画『かっこちゃんⅠ』出版。 2010年宮島にて『似顔絵しゃもじ』の活動を開始。 2016年テレビ大阪『夢職人』出演。 似顔絵、漫画、イラストを3本柱とし広島を拠点に活動中。。